いか焼の腰の強さは小麦粉のグルテンによりところが大きい

グルテンは小麦にしか存在しない蛋白質の1種で、麺の伸びであったり、パンの骨格を担っている。グルテンはグリアジンとグルテニンという単純蛋白質が絡み合った混合物の名称で、グリアジンはシロップのような流動性がある粘着性の高い物質。一方グルテニンはゴム状で弾力性に富んでいる物質である。この相反する性質を持ち合わせているのがグルテンである。
 小麦にはグルテンのほかにアルブミン、グロブリン、プロテオーズという蛋白質を含んでおり、これらは小麦の蛋白質中の約15%で、残りはグルテンとなる。製麺におけるグルテン(蛋白質)への関心度は製パンと比較すると低い。これは麺類ではグルテンの役割よりもむしろ炭水化物であるでん粉の及ぼす影響の方が大きいからである。どちらかというと1次加工的性(製粉)を左右していると言える。しかしグルテンによって連続的で立体的な網目構造が形成されている中にでん粉粒が存在している。いか焼ではこの網目構造を上下からの鉄板の熱と圧力で横方向に整列させ間隙に気泡(水蒸気)を形成しないようグルテンの食感を表に出すような加熱方法なのです。 余談では有るが、人造肉(グルテンミート)はこのような性質を利用して製造される


グルテンの網目構造

小麦粉の用途は、グルテンの質と量できめられますが、加水量やこね方など加工方法も小麦粉がもっているグルテンの質と量によってちがってきます。

<いか焼の場合>
グルテンの多い強力粉を使い、
粉と同量の水を加え(重量比)、
グルテンがよく形成されるように、
充分混ぜます。

<パンの場合>
グルテンの多い強力粉を使い、
粉に対して60-65%の水を加え、
グルテンがよく形成されるように、
充分こねます。

<うどんの場合>
グルテンの量が中程度の中力粉を使い、
粉に対して30-40%の水を加え、
ミキサーでソボロ状にしたあと、
ローラーで圧延します。
手打ちうどんは、水を多く加え、
よくこねるのでグルテンがしっかり形成され、
独特の歯ごたえが生まれます。

<ケーキ、天ぷらの場合>
グルテンの少ない薄力粉を使い、
グルテンが形成されすぎないよう、
軽く混ぜます。

いか焼を焼く

いか焼は、上下から鉄板で挟み込み加熱する事により、スピード調理が可能なことと、水蒸気は追い出され気泡が形成されず、グルテン組織が平行に並ぶため独特の食感が生まれる

上からの鉄板がない場合グルテン組織の柱により気泡が形成されふっくっらとしたパンになる。この方法だと ナン (インドのパン)のようにふっくらモチモチの組織となりいか焼としては不適当な焼き上がりとなる

薄力粉


蛋白質:少ない グルテン:力が弱い。
粉粒子の大きさ:極細かい
用途:ケーキ、クッキー、天ぷら粉、饅頭
輸入元:アメリカ(銘柄名WW)

薄力粉に含まれる蛋白質は少なく、あまり重要な役割は果たしていません。また、薄力粉のでんぷん粒は極小さいのが特徴です。お菓子や天ぷら粉などに使われます。日本では薄力粉専用の小麦は栽培されておらず、アメリカなどから輸入しています。


中力粉

蛋白質:中位 グルテン:中位
粉粒子の大きさ:細かい
用途:うどん、そうめん、フランスパン、クラッカー
産地・輸入元:日本全域(栽培が多いのは九州、関東、北海道)、オーストラリア(銘柄名ASW)
中力粉に少量の水を加えてこねると、粉の中に含まれる蛋白質がガムのようにのびて、グルテンというものになります。グルテンはでんぷん粒子をつなぎ合わせる役割を果たすため、うどんのように細くのばしても切れることはありません。グルテンが少ないと柔らかいうどんになり、多すぎるとかたく、ボキボキとしたうどんになります。
日本で生産される小麦のほとんどは中力小麦です。また、オーストラリアからたくさん輸入されています。代表的な品種にシロガネコムギ・チクゴイズミ(九州)、農林61号(関東〜九州)、バンドウワセ(関東)、チホクコムギ・ホクシン・ホロシリコムギ(北海道)などがある。

強力粉


蛋白質:多い グルテン:よく伸び力強い
粉粒子の大きさ:粗い
用途:パン、中華めん
産地・輸入元:北海道、カナダ(1CWなど)、アメリカ(HRWなど)

強力粉に含まれる蛋白質は多く、パン生地の中で幅広く、力強くのびるグルテンとなって、粉の粒子をつなぎ止めます。このため、イースト菌の出す炭酸ガスをうまく包み込んで、ふっくらと膨らんだパンが焼きあがります。
いか焼の生地のコシを形成し、噛めばかむほど味が出る いか焼が出来上がります。
本では北海道ですこし栽培されていますが、ほとんど海外から輸入されています。代表的な品種にハルユタカがあります。

(準強力粉)

強力粉と中力粉の間に、準強力粉という分類を加えることもあります。粉の性質は強力粉に似ていますが、グルテンの力はやや弱くなります。九州農業試験場で育成した西海180号はこのグループに分類できます。西海180号は現在品質試験を続行中ですが、菓子パンに適するとの結果がでており、また、中華めん材料としての適性も試験中です。


注)以上の3枚の図はグルテンの働きをイメージとして表した
もので、実際の形態を模式図にしたものではありません。







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