いか焼文化論

 関西人、特に大阪人はせっかちなのです。街を歩く人のスピードは全国一位(香港人に負けてるようだが)、信号に至っては、待ち時間が惜しいためフライングは日常茶飯事!!おかげでカウントダウン信号が出現する始末・・・・。 せっかちな性格は日常生活や文化に絶大なる影響をもたらしているのです。それは食文化も例外ではなく独特の食べ物 たくさんの和風ファストフードが出現するきっかけとなっているのです。
 牛丼寿司そば・うどんは 和風ファストフードの代表では有りますが 一般的な寿司である江戸前寿司(にぎり)より同一の形の寿司が早く一挙にできる、バッテラに代表される函寿司が関西が中心で発達したのも、そういった文化背景が有ったからでしょう。
 何でも早くしたい、その発想が大量に同じ味 同じ握り具合の寿司が製造出来る、型押し製法を編み出した・・・。一個一個 握ってたら辛気臭いわい!!てな具合・・・・。
 麺類(そば)の基本は盛りそばですが、生粋の浪花ッ子は、いちいち汁に浸けてたらめんどくさい!!一緒にしろ!てな具合に麺類といえば即ち かけうどん注1が定番となった。そこに甘辛く炊いたおあげさん注2をトッピングしてタンパク質を補うメニュー、きつねうどん注3が出来上がった。麺とおかずを一緒に取るって・・・いかにもせっかちが考えそうなうどん。そういった発想で とにかく飯を食うにも時間が惜しい、立っていてでも食べることの出来る食事、食器も一つ そういった背景でたこ焼きやお好み焼きが出来ていった・・・・。

 ただ そのように受け入られて来た和風ファストフードであるたこ焼お好み焼でも、浪花ッ子は焼く時間が待ってられへん!たこ焼は早くて3分程度 お好み焼5分程度かかる  そこで、考え出されたのが 鉄板を両側から挟み込み上下から熱を加える方法、いか焼調理法なのです。この方法だと単純に1/2の時間で焼ける。尚且つ 上下から思いっきり押さえつけるため厚みが 数ミリ程度に伸びるおかげで、調理時間なんと!30秒! 電子レンジのない時代に、これが究極のスピード調理注4だったのです。

 味付けのソースにしても上に塗りたくるのではなく、クレープのトッピングがごとく、うすっぺたつい、いか焼巻き込むことによってソースが手に付かず、素手で食べることが出来る。この技は、たこ焼やお好み焼には不可能なのです。

 かくして いか焼は、最も関西人に最も適した食べ物だと 私は、考察いたします。

 注1:肥沃な土地と天候に恵まれた関西地方は小麦粉文化が発達して蕎麦を栽培する必要性が無かった。このことがうどんを含め後の粉物文化を発達させた。
 注2:大阪人は食べ物に限らず愛用するものに、親しみを込めて○○さんと、敬称をつける場合がある。
 注3:大阪でうどんといえば、きつねうどん 昔、うどんとお寿司(大阪寿司)を提供する店が多くあり、南船場に「松葉屋」といううどんやさんが、ある日 せっかちな大阪のお客さんが、提供したうどんといなり寿司をうどんの中にいなり寿司をぶち込んで食べ始めたのを見て店主が考え出したうどんだそうです。
 注4:ファストフードの代表選手であるハンバーガーの最大手マクドナルドが長年の研究の末調理時間を短縮する目的で導入したのが クラムシェルグリドル、上下の鉄板ではさんでハンバーガーパティを焼くのであるが、その形状が貝が閉じたり開いたりする様を名前にした。いか焼機ではそれからさかのぼること70年も前に基本調理方法が確立された。




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